それにしても…まだ実感が沸かないIDという重たい肩書き。緒方や城崎副部長と一緒の仕事場で一緒に仕事して…緒方達よりちょっと少ないお給料をもらうのか。

明日から何もかも変わる。環境も、仕事内容も、緒方の怒鳴り声の数も……増える。


「羽鳥?俺たちも仕事場へ戻って、さっさと面倒ごとを片付けるぞ」


ぼーっとしていたあたしに気づいたのか、背後から緒方の声が飛んだ。

あたしは頬に手を当てたまま黙っている。


「お前は職場移動もあるしな。荷物もまとめなきゃならねぇ」


男らしい横顔。朝日を浴びてあたし達の何倍も仕事をしてきたんだなと感じさせられる。


「かっこいい…」

「は?」


思っていたことを思わずそのまま口にしてしまったことに気づき、前言撤回を試みる。


「いや…あ、あの『仕事しているとき』の緒方福部長がですよ!?な、なんかあたしすいません。えへへ」