* *



「……申し訳ございませんでした」


土曜日の午後。


あたしはある一人のヤンキーを怒らせてしまった。


目の前にいるヤンキーは居酒屋のカウンター席で頬杖をつき、苛立ちを隠せないのか、長い脚を何度も揺らす。



「まずね…」


ヤンキー…もとい、なっちゃんがあたしを見上げた。


「はい」


悪いのは、完全たなるこのあたしだ。


下手にまわる以上、他に手はない。


「遅い!」


降ってくるなっちゃんの声に、あたしは目をつよく瞑った。


分かってます。分かってますとも。ええ。


強制的に連れ出したのはこのあたしです。

しかも、それにも関わらず遅刻したのはこのあたしです。


「しかも何で待ち合わせが居酒屋!?お前、いくつやねん」


「…16ですけどぉ?」


だって、ここの居酒屋が一番近いんだもの。


仕方ないでしょ。


「しかも昼の居酒屋なんて来たことないわ」


「あたしだって、居酒屋自体初めてだよ」



あたしはチラッとなっちゃんに目を落とす。


なっちゃんの服装にあたしの目がいったからだ。


なっちゃんが制服以外の服を着るのを見るのは、もしかしたら初めてかもしれない。