* *


学園祭の準備程、面倒くさいものはない。



「どーしよっかな。これ…」


あたしは"チケット"をヒラヒラと揺らしながら、焦点の合わない景色を見つめる。



「んー?」


その瞬間、あたしの手にあったはずのチケットが何者かにより奪われてしまった。



あたしは慌てて上を見上げる。


そこにはチケットを見ては首を傾げる陸の姿があった。



「あっ!この歌番組ってあの視聴率がハンパないくらいヤバイって噂の!」


最近の若者の喋り方といったら…。


陸の言葉に、あたしはため息をついた。



「そーなの。行きたいんだけど、行く相手がいなくって…」


陸はふーんと言って隣にいる酒巻にチケットを渡す。


「行く相手がいない…?陸連れていきゃあいいんじゃん?」



酒巻が不敵な笑みをこぼす。


その不敵な笑みは、蓮兄の不敵な笑みと何だかかぶる。



「はっ!?何でだよ!」


陸が顔を真っ赤にさせて、酒巻を睨む。


明菜の言う通り、彼は本当に素直な子だ。


恐ろしいほどに顔にでる。



「いいじゃんか、なぁ?央。」


酒巻が不敵な笑みをふたたびこぼし、あたしに同意を求める。