「陸があ?アイツは、野球ヲタクなんだよ?そんな奴に恋なんて…ッ」
「もー、これだからアイドルに恋する妄想女子は!」
…妄想?
あたしのどこが妄想女子?
あたしは首を傾げた。
「いい?安西君は、アンタが好き!だから、そんな紛らわしい行動ばっか取らない!いい?わかった!?」
「陸がいつ、あたしを好きだなんていったのよ」
「いつも。」
突然、あたしの声でもなければ明菜の声でもない声がおちてきた。
明菜の後ろには、軽くウィンクを飛ばし、ピースを送る男の姿があった。
「……げ。酒巻」
あたしは残念な顔を、分かりやすいように大袈裟に表した。
「央、顔に出すぎだって」
彼の名は酒巻仁。
彼もあたし同様、スポーツや勉強でずば抜けている訳ではなく、平凡な東高生だ。
…陸の親友でもある。
=あたしも友達。
「陸はアレでも結構、一途なんだよ?その気持ちを弄ぶなよ」
「だからあたしは弄んでないって」
陸があたしを好きだって聞いても、なぜか不思議と驚かない。
別にアタシ自身、特別モテるってわけじゃない。
…むしろ、モテない。
告白なんてされたことないさ?

