あたしは目をゴシゴシと掻き、陸の青いネクタイを解いた。
「ちょ、お前、何テンション上げてんだよ!こんなの監督に見られたら俺退部だぜ!?」
ネクタイのなくなった陸はワイシャツだけというシンプルな格好になった。
だけどその格好、厳しい野球部にはタブーなんだよね。
「そんなので怖がってるのならば、野球なんて辞めちまえ!」
今のあたしには何でも破壊できそうな力が、宿っている。
「何、央って青山さんが好きなの?」
あたしのハイテンションぶりを凝視した陸が、冷たい眼差しをこちらへと向ける。
「まさか。あたしは海斗一筋だよ」
「じゃあ、何で青山さんが央に用事なんてあんの?」
…?
待って。
コイツ、すごい勘違いしてない?
あたしは慌てて、先ほど外したネクタイを陸の首に巻く。
陸はあたしより20cmも背が高いもんだから、背伸びしなければ届かない。
くそっ。
「…借りを返しに来ただけだよ」
「借りが作る程、仲良かったの?」
眉間にシワをよせ、口角を微かに上げる陸はあたしの知っている陸じゃない…。
「んー…。違…ってか、陸に関係なくない?」
「…ッ、関係あんだよ」
下唇を噛みしめ、どこか遠い一点を見つめた陸は陸とは思えない程に怖い。

