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あの倉庫で起きた事件により、なっちゃんにかけられた疑いが見事に晴れた。


そしてあの柏木とかいうハゲは、現行犯逮捕。


そしてあたしは今、蓮兄の仕事場…つまり弁護事務所にいる。


「全く。酷い怪我だな」


蓮兄が気絶中のなっちゃんの腕を掴んでは、マジマジと見つめる。


現在の時刻は23時。


あたしも目が覚めたのが丁度30分前で、気付いた時にはもうあたしと蓮兄となっちゃんの3人だけだった。


健と青山さんと青山さんの妹さんは、家へと帰ったらしい。


青山さんも健も酷い怪我をしていたが、蓮兄がお互いの両親に上手く説明したみたい。


…しかし。

なっちゃんの家は、彼が起きない限りワカラナイ。


「コイツが一番酷い怪我してるな。なんせ、鉄パイプだからな」


「でも蓮兄、その鉄パイプを片手で操ってたよね?」


そう。

蓮兄、喧嘩と無縁の仕事をしているくせに、今日の事件で蓮兄はすごい活躍をしていたのだ。


「あんなの誰でもできる」


「いやいやいや、できないでしょ。不良のなっちゃんでさえ、だめだったんだよ?」


「俺にも過去ってのがあるからな…」


蓮兄はそう言うと、なっちゃんの腕を離し、ディスクに目をやった。


……蓮兄の過去?


「何、蓮兄、不良だったの?」


「さあ…」

蓮兄は首を傾げると、コーヒーを一口飲む。