「陸のところ、行くか?央」
酒巻があたしの顔をうかがいながら言った。
あたしはなっちゃんの背中に顔をくっつけたまま、頷いた。
陸たちのいるところへ行くと、選手みんなが座って泣いていた。
「なっちゃん、おろしていいよ」
「あぁ、大丈夫か?」
「うん、もう平気」
あたしはなっちゃんからおりて、陸を探した。
えと、背番号…1番だから…。
「あ、いた」
なっちゃんが指した一番奥…その先には、背番号1の選手が背中をみせて、肩を震わしていた。
泣いている…。
あの陸に近付くことはできない。
だから、みんなから遠ざけられているのか。
仕方ないよね…。
だって、ホームラン打たれたんだもの…。
だから選手も、後輩も、応援してくれた人たちもみんな陸の周りにこないんだ。
「おい」
だけど、一人だけ陸に近付く者がいた。
陸が顔を上げた。
「……弥生、さん…」
「お前、手どうした?」
なっちゃんがそう言った瞬間、周りが静かになったような気がした。