* *


「でも東は、絶対勝つよね!」


電車に揺られながら、あたしはガッツポーズを決めた。



「分からんな。東と戦うあの高校の4番は、ホームラン出しまくる。油断はできん」


………ほお。


「それに、ピッチャーもすごい球を投げてきよる。速すぎて、素人は絶対見えへん」




「……なっちゃん。やっぱり詳しいのね」


あたしがそう言うと、なっちゃんと目が合った。



「……また、ハメたな」


「何でよ、自分から喋ったんでしょ」



あーもう、電車の中超混雑なんですけどぉ。


暑い、あーつーいー!


「野球が好きだから、自分から言うんだ!」


「ちゃうわ、ハゲ」


「央、はげてないもん」


陸とは違った意味で、あたしとなっちゃんは気が合う。



「……ひゃぁ…!」


突如、お尻に違和感発生。



ち、ち、ちちちち痴漢!


「な、なっちゃん!」


あたしはすぐ隣のなっちゃんに耳打ちする。


「何だよ、うっせーな」


「ち、痴漢。お尻さわられてるぅ…」