「アイツは野球を捨てたんだ。」


「分かってます!でももう一度させたいんです!」


お願いします、とあたしは腰を曲げた。



……なっちゃんが好きなんだもん。



野球して、笑顔になるなっちゃんを見たいんだもん!



「甲子園一緒に応援して、昔のキモチを蘇らせてもう一度野球させたいんですー」


目頭が熱くなり、涙が出そうな勢いだ。


そんなのかまわない。



「……赤外線でいい?」


桜庭海斗がそう言った。


「へ?」


「捺来に野球させたいってキモチは俺も一緒やねんね。やけん、教えるから野球させてな?」


意外にも、桜庭海斗はあっさりと折れた。



「は、はい!」


桜庭海斗は携帯を取り出し、あたしも携帯を取り出して連絡先を教えてもらった。



お、おっしゃー!


桜庭海斗はまた仕事があるみたいで、あたしに手を振り、マネージャーと帰っていった。



「お前、すげーな」


やり取りを見ていた陸があたしに近付いてきた。



「これで、明日なっちゃんと応援するからねー!」



そして、なっちゃんの心の奥底の鍵を開いてやるんだから。