陸がフォークを静かに置いた。
はやい。
もう食べ終えたのか。
「俺の球の投げ方見た事ある?ねーよなー」
「ない。だってみんな球の投げ方一緒じゃん」
あたしがそう言うと、陸が笑った。
な、何さー。
「素人にはそう見えるかもな…って素人でも分かるんじゃね?」
「あたし、素人以下だもん。仕方ないじゃん」
「それもそうだな」
あたしと陸は目を合わせて、笑った。
「俺の投げ方な、弥生さんの投げ方を参考にしてるんだわ」
そうなんだ。
でも、なっちゃんが球を投げてる姿なんて見た事無いから何もいえない。
「投げ方じゃなく、打ち方も」
陸がなっちゃんを参考にするって事は、やはり陸はなっちゃんを尊敬しているのだ。
…一番の憧れの先輩なのだ。
「俺って、右利きじゃんか?」
「それも知らないけど」
「何でよ、席隣だから、見えるだろ!」
「右利きの人に、右利きだーなんて気にしないもん。普通すぎて。…まぁ、左利きの人のだとちょっと興味あるけどさ」
「まーそりゃそうだけど」
陸が口をとがらす。
…それ、得意だね、陸。

