* *


犯行当日




「ねえ、あんたが弥生捺来って言うの?」




放課後の教室。

後ろから挑発したような声が聞こえ、捺来は後ろを振り向いた。



「……そうだけど」


後ろに立っていたのは、どんな男でも落とせるという噂が立つ程の美少女…美河麗歌だった。



捺来は麗歌の様子をうかがった。



「…あたしと付き合ってみない?」


…余裕満々の笑み。


俺があんたの虜にでもなってると思ってんの?


何だかこの目の前にいる女に馬鹿にされているような気がして、捺来は顔を歪ませた。



「俺を落とせる女なんていると思ってんの?」



美河麗歌はこの西高史上最強の美少女とまで言われ、どんな男でも簡単に落とせるとして有名。


一方。



弥生捺来はこの西高史上最強の美少年とまで言われ、どんな女でも落ちることはなかった。



「いちいち、うざいんだよ」


捺来は鞄を持つと、冷たい空気の流れる教室から後を去った。