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「あの…如月さん」


あたしは今、夏休みを満喫中。



高校2年生の夏休み…ってなんだか、微妙なお休みだ。



なっちゃんに、会いたい。


でも、会えない。


なぜなら、なっちゃんの進路が分からないからだ。


就職するのか、進学するのか…。


まぁ、西高は進学校じゃないから、就職組が9割を占めるって聞いたことあるけど…。


それでも、なっちゃんがその中の1割の人間だったら大変だからだ。


連絡先も、分からない。



でも家は、夜からしかクーラーをつけてはダメなので…。


現在、あたしは蓮兄と雪さんの仕事場のクーラーに涼みにきている。



本当はイケナイ事だけれど、ここの仕事場の人はみんな優しい。


あたしは、常連だ。


そして、今日も"悩める子羊"が蓮兄に依頼をする。



「……あっ。お前」


蓮兄が、お客さんに、そう言った。


お前って…。

全く、失礼な弁護士だ。



「あっ、だめ。如月さん……」


お客さんが蓮兄の動く唇を、両手でおさえる。


あたしは、お客の服装に、正直ドンビキしてしまった。