「お前、また野球やめれとか言われるぞ?」


あたしの胸にチクリと何かが刺さる。


まるで、小学生のいじめの罠にハマッてしまったような感覚だった。



「央をそんな悪く言うなよ!今、俺は央と話してんの!後でいいっしょ?」


「今、来いって言ってんの!」


あたしは酒巻の大きな声に恐怖を抱き、陸の耳元でこう囁いた。


「陸…。酒巻の言う事聞きなよ…。あんたらの友情が崩れんのだけはやだよ?」


「大丈夫だから、な?」


全く、危機感のない男だ。


「仁ー。じゃあ、お前がこっち来いって」


「お前、央の事許せんのかよ!?」


「許すぅ?別に、央は許されないことなんてしてないよ、なぁ?」


陸に同意を求められたが、はっきり言って、どう答えればいいのかわからない。



「しかもよー、俺ら高校生だぜ?こんなガキみたいな遊びすんなよなー」


バカみたいに笑う陸は、本当にやさしい。


あまりの優しさに、あたしの目からは涙が今にでもこぼれおちてきそうだ。