* *


「央!昨夜はすまん!ほんまにすまん」


あたしの机の前にきて、顔の前で両手をあわせる陸。


……まだ気にしているのね?


もう、朝よ?


「いや…別に、あれは予行練習だったんでしょ?気にしてないって」


「うん…」


陸が目をうるうるさせる。


だー、何よ、その瞳!


ちょっと、キュンッて母性本能くすぐられちゃうじゃないかぁ…。


でも…。


「陸…、あんまりあたしに近付かないほうがいいと思うよ…?」


実はあたし…。


今、みんなから軽く避けられているのだ。


陸はきっとそれを知っている。


知っているからこそ、いつものように朝一番に酒巻のところにいくのではなく、あたしのとこに来ているのだ。


彼の優しさは、本当に天下一品だ。


「え、何でよ」


わざとかは、分からないけれど、陸がとぼける。


「…ん、だから…」


「おい、陸!ちょっとこっち来てみ」


あたしの言葉を遮り、酒巻をはじめとする男子共が陸をよぶ。


「……やだもん」


陸は首を横に振って、酒巻の言葉を蹴るように拒否する。