「…お前、部活は?」


捺来の声により、進む足が止まった。


「休みです」


咄嗟に嘘を吐いた。


「嘘つくなや。東高の野球部はどこの学校よりも期待を背負ってんだぜ?しかもこんな時期に休む野球部がどこにあんねん」


やはり、バレたか。


陸はチッと舌打ちを漏らした。


「野球、やめるんです、俺……」



弥生さんになら、分かってくれるはず。



エースという存在に位置しながら、辞めざるをえない理由…。



なぜなら、弥生さんだってその道を選んだからだ。


しかし、俺の考えは甘かったということに弥生さんの表情で気付いた。



「…は、はぁ?」


「弥生さんこの前言いましたよね?恋と夢を両立できる筈がないって…。」


捺来は、過去を駆け巡り、自分が彼に何を伝えたのかと考える。


「ああ」


「なら、俺は恋を選択していいですか」



捺来はそういいきった陸をマジかよ、というような目で見る。


なんで、そこまで央を…。


「央が弥生さんが好きって事ぐらい分かってます!それでも…」


陸が唇を噛みしめる。


"俺が、弥生さんに勝てるわけないじゃん…。"


心の本音を、隠すように。