「もうダメだぁ。俺、ホストなんて無理なんだわ…」


陸が受付をしているあたしの隣の椅子に座った。


「……なんで座んの」


あたしは陸から、離れたところに座った。


その瞬間、陸の顔が強ばる。


「さ、さけんなよ」

「あはっ、ごめんね?」


つい、何にも関係ない陸にさえやつ当たりしてしまうあたしは究極の最低女だ。


離した椅子を元に戻す。


「ずっと、仁のヘルプ?みたいなもんやってて、すっげー体力減ったわ。何か、変化球を打たれた感じ」


「何でもかんでも、野球で例えないでよ。めんどくさい」


「なあ、明後日、甲子園予選があるんだわ。見にこないか?」


陸が体勢をかえて、いきなりあたしにそういった。



「……どこと、やるの?」


「ああ、明響高校…」


めいきょう…。

あたしは記憶を辿り、その高校が野球強いのか考える。


わかんないや…。


「とりあえず、まあ…強い学校だ。……来いよ」


「うーん…。でも、1回戦なんでしょ?東は勝つこと決まってるし、甲子園で見ちゃだめなの?」


あたしがそう言うと、陸は呆れたように笑った。


「ははっ。兵庫まで来てくれんの。ありがたいね」


「そっか。甲子園って兵庫でやるんだっけ」


陸がアホか、と付け足してそのまま視線を窓の向こうに目をやる。