* *


「えーっ、捺来って彼女いないのぉ?」


「じゃあ、あたしなんてどうですかぁ!?」


おーい、こらこら。

そこ近すぎでしょう。


あたしの眉間にシワがよる。


なっちゃんはあの後、明菜と交わした約束を果たすため、あたし達クラスの出し物に参加してくれていた。


なっちゃんが人一倍おバカだって事は、百も承知。


だけど、正直ここまでバカだとは思っていなかったよ。


あたしは入口で受付をしながらなっちゃんとなっちゃんの周りにいる客を横目に睨む。


なっちゃんの周りには、女性客がわんさかいる。


何でだろう。

なっちゃんはあんなにも無愛想で冷血のくせに、なぜこんなにも人気が集まるのだろう…。


やはり、顔だけ?

いや、それはない。


顔だけで商売ができるはずがない。


「ははっ。俺なんて全然モテないっすよ」


ふん。

嘘ばっかり。


なっちゃんのスーツ姿のあまりのかっこよさに、腹がたった。


「え~、うっそだあ」


女がなっちゃんの腕にさりげなく自分の腕を絡ませた。


「…!!」


あたしはあまりの衝撃に、頬杖をついてた手が滑ってしまった。


「…痛」


おかげさまで、肘に傷が入ってしまったもんだ。