「え、なんで?央ちゃんに会いたくないの?最近連絡もとってないんでしょ」


「別に会いたいとかそういう関係ちゃうわ。…とりあえずアカンねん」



「なんで」


捺来は健の問いかけに、黙る。


まさか、自分の過去を知る存在者がこの学校にいるだなんて口が裂けても言いがたい。


「ほら、理由なし。いくぞ!関西人!」


「何や、それ」


仕方ない。


こんな広い敷地内で、アイツに会うだなんて保証はない。


むしろ、見つけた方が奇跡に近いようなものだ。


そうだ。


絶対に会わないのだ。


捺来は自分自身にそう言い聞かせた。



ガヤガヤして、健の姿もすぐに見失いそうになる。


それほど、学園祭が盛んに行われていたのだった。



「……健」


捺来は校舎を見上げて、ボソッと呟いた。


「ん?何だ?」


「どうして、俺は東に行けなかったのだろう…」


「え?」


健は何を言ってるんだとばかりに、首を傾げる。



「…あのとき、めげなかったら、俺は東に行けたのだろうか…」


「え、お前東高志望だったのか!?」