出会ってまだ1ヶ月あまりのあたし達。


全てを知っているかのようで、本当は何も知らない関係。



連絡先も知らなければ、彼の家も知らない。



「もうアカン。さっさとホテル行くぞ」


あたしはなっちゃんの言葉に目を見開いた。


「ホテルぅ!?ラブホ!?」


あたしの大声に驚いたのか、あたしの言葉に驚いたのか周りのお客が一斉にしてあたしを見る。


だけど。


なっちゃんだけは反応が違った。



「この変態!誰がラブホ行く言うてんねん!会場や、アホ!」


相変わらずなっちゃんの口の悪さは天下一品だ。



あぁ。そうか。


この歌番組って、都内の有名なホテルでやるんだっけ。



「こっからじゃあ、片道2時間はかかるよね…」


「俺ん家からだと、30分でいけるけど」


……えっ?


あたしは、ドアを開く手を止めた。


……どうして?


「だったら、それを先に言ってよ!だったら、駅前の居酒屋なんていわなかったよ!?」


「ド田舎に住むお前が都会の街中歩けるか。」


何か、む、むかつくー…!


でも、それって、あたしの事心配してるって捉えてもいいのかな?