何不自由のない屋敷の中に自由はなく、



そんな中でいつも暖かな笑顔をくれるアナタに抱いた憧れは逆手に取られ、




「わたしがお好きですか?」



こう言ってわたしに尋ねた瞳が濁ったことにも気付かずに、



わたしはアナタに愛されたいと願ってしまった。




わたしを抱くアナタに愛は欠片もなく、




何も知らないわたしを汚していく度にその顔は悦びに満ちていく。




そして、



アナタに汚されていく度にわたしの中に生まれるのは、




憎しみという新たな感情だった。





だから、




「くっ……」


「アナタが憎いわ」



わたしに重なっていたアナタの背中に、



枕の下に忍ばせていた短刀を突き立てた。




低く呻くアナタはわたしに被さり、




わたしの正面へとゆっくり顔を向けた。




その顔は何故か昼間のように柔らかかった……。




「これで……貴女は自由だ……」


「えっ……」




わたしの上で荒い呼吸をするアナタの瞳は愛しげで、



「貴女を苦しめたわたしは……もう居ない」




力尽きたアナタの体を気付けば泣きながら抱きしめていた。