「アホやアホやとは思ってたけど……末期やな。これは」
「ウルサイ。黙れ」
他の誰でも無い、ヨシにアホ扱いされるのはプライドが許さない。
例えわたしの行いが、
アホって言われるに値するような事でも……だ。
「レモンの蜂蜜漬けって言って……蜂蜜のビンにレモン丸々沈める奴がどこにおんねん……」
呆れたように笑うヨシの片手には、蜂蜜のビンに沈んだレモン……。
つまりは、レモンの蜂蜜漬け……。
「あれやん。ハブ酒やん。これ」
「っアホ!!」
足元に転がっていたボールを、ヨシに投げつけて空き地を飛び出した。
胸に当たったボールの衝撃で、噎せてる声が聞こえたけど……無視や。
ヨシのアホ……。
アンタが柄にも無く、
レギュラー取る為に真剣な顔で自主練したりしてるから……。
応援したげようと思っただけやんか……。
……アホ。
その日の夜。
うちの玄関先には、
空っぽの蜂蜜のビンが転がっていた。
ホンマ……、
……アホやな、アイツ。