「手、出してみ?」
テスト勉強の休憩中。
「喧嘩せんと食べんのよ?」
ヨシのママが用意してくれた一口ドーナツを、ぼんやりテレビ見ながら食べてたワケやけど……。
真向かいに座ったヨシが、ココア味のドーナツ持って笑ってる。
「……なに? くれるん?」
なんか一人で楽しそうに笑ってんのが鬱陶しくて、渋々差し出した左手に、
「ほらっ、指輪」
ドーナツを突き刺して、ニカッと白い歯を見せながら満足そうにまた笑ってる。
「……爪の間に入ったんやけど」
どう考えたって、穴より指の方が太いやろ……。
爪の中に入ったドーナツを掻き出しながら、おもむろにため息をついた。
「なんやねぇん……。ちょっとしたお茶目やんけぇ」
わたしとの温度差に、ヨシは不満そうに唇を尖らして拗ねてる。
アホ……。
どうせアンタ、
左手の薬指にはめる指輪の意味なんか、知らんねやろ?