長谷部の食えない笑顔が、小さな微笑みに変わる。



「わたしも良いかな?」

「嫌だ」


やっぱり長谷部は、俺の答えを無視して隣にしゃがむ。


俺の用意した花束の隣に、一輪の向日葵が寄り添う。



「アナタには一生勝てないんだろうな」

「…………」

「でもね。アナタを想う高倉 那柘が好きだよ」



隣を振り返るより先に、茶髪を揺らした長谷部の背中が飛び込んだ。


「……おい」

「はいっ」


慌てて掴んだ腕の反対から、差し出された向日葵。


「高倉 那柘」


「……フルネームで呼ぶな」


そうしないと俺が応えないのを、長谷部は知ってる。



「じゃあね」


「…………」


ピンク色の食えない笑顔が手を振り、陽射しと溶け合った。


やっぱり、長谷部は向日葵に似てる。
明るい太陽がよく似合う……。


「高倉 那柘」


その陽射しになら……溶けてしまえるかな。


「……なんだよっ。長谷部 陽夏花」


手の中の向日葵が、熱い風に吹かれて花びらを揺らした。
目の前で、向日葵は大きく花開いた。



「また、明日っ」




思い出さなくても会える笑顔に、
俺は溶けていく……。




-END-