patchwork stories (短編寄せ集め)




アナタに恋をしたのはちょうど一年前。



並木の桜が蕾をつけ始めた、春先のコトだった。



蕾の膨らみと共に募る想いは日々増していき、



咲き誇る花びらの美しさと儚さに、アナタを重ねた。



舞い散る桜はアナタを想い、幾度となく流した涙に変わり、



新緑入り混じる葉桜はわたしの恋心をかき消させるように、



桜の花を全て、散り行かせた。




緑一面の葉が生い茂る頃に断ち切った想いは、




木枯らしに舞う。




それでも消えぬ想いはまた、



春を知らせる風に運ばれ、蕾を膨らませた。




キラキラと光る太陽の下じゃなくて良い。



月明かりに照らされ夜空に浮かぶ淡い桜色を、




この温かな手のひらと共に愛でていたい。




並木の桜は今は二人だけのモノ。