「可笑しいよ、こんなの絶対可笑しいよ」
「・・・・・」
「彼女がいるから?不倫不倫だから、そう言ってるの」
「不倫なんかさせやしない!」
「不倫をさせたくないから・・・」
玲子は直樹に妻がいた事も亡くなっていた事も全く知らなかった。
「・・・・・」
「結局は直君も理屈だけの人、何の優しさもない立場が悪くなったら逃げるんだね」
直樹は何を言われようが言葉を返そうとしなかった。
雨は少しずつ弱まって来た。
「どうして、大事な誕生日に、しかも大事にしていたこの場所で…」
「大事な場所だから、ここで、今、告げたんだ」
「約束なんて出来ないよ約束なんかしない」
玲子は強くそう言った。
「あぁ」
「それに私だって他の誰かと結婚しているかも知れない」
