5年先のラブストーリー-この世のしるし-



その日の病院は混んでいたせいもあって、直樹は薬局でかなり待たされ、ようやく会計を終え家路へと向かっていた。


遠く後ろから「工藤さーん、工藤さーん」と聞こえて来た。


その声に振り向くと、勤務を終えた玲子が向かってくるではないか。


直樹は何事かと胸の鼓動を響かせた。


少し呼吸を乱しながら追いついた玲子が言った。

「工藤さんはもう帰るんですよね?」

なぜ、そんな事を聞くのかあまりに突然の出来事に思わず「うん、家が遠いから・・・」と素っ気ない返事をしてしまった


玲子は直樹の体調を気遣うと共に、また別に確認したい事があって追いかけて来たのだったが・・


そそっかしいイメージの直樹しか知らなかった分素っ気ない口調に暗い表情を見せた。


今の状況が全く見えていなかった直樹は、無言では気まずくなると思い、戸惑いながらも切り出した。


「キミ看護師だったんだね」


「・・・」


その一言がどう言う意味を持っていたのか、玲子は益々落ち込んだ。


互いの気持ちがすれ違う中、二人は駅に着いた。