その日の病院は混んでいたせいもあって、直樹は薬局でかなり待たされ、ようやく会計を終え家路へと向かっていた。
遠く後ろから「工藤さーん、工藤さーん」と聞こえて来た。
その声に振り向くと、勤務を終えた玲子が向かってくるではないか。
直樹は何事かと胸の鼓動を響かせた。
少し呼吸を乱しながら追いついた玲子が言った。
「工藤さんはもう帰るんですよね?」
なぜ、そんな事を聞くのかあまりに突然の出来事に思わず「うん、家が遠いから・・・」と素っ気ない返事をしてしまった
玲子は直樹の体調を気遣うと共に、また別に確認したい事があって追いかけて来たのだったが・・
そそっかしいイメージの直樹しか知らなかった分素っ気ない口調に暗い表情を見せた。
今の状況が全く見えていなかった直樹は、無言では気まずくなると思い、戸惑いながらも切り出した。
「キミ看護師だったんだね」
「・・・」
その一言がどう言う意味を持っていたのか、玲子は益々落ち込んだ。
互いの気持ちがすれ違う中、二人は駅に着いた。
