12月25日


クリスマス


度々、会社を休むようになった直樹を心配していた近藤は別室へ呼んだ。


誰1人、本心を打ち明けられなかった直樹が遂に重い口を開いた。


直樹が入社試験に持って来ていた(直子が生まれて来る時に描いた絵)に心を奪われ、またパリ行きへの思いを知っていた近藤はあまりの内容に絶句した。



そう、この時直樹は余命宣告を受けていたのだった。


この日を最後の勤務と決めていた直樹は、やり残した一枚の絵に着手し始めた。


しかし、その絵は思うように描く事が出来なかった。


そうとは知らず、寺田は相変わらずだった。


「工藤さん、しっかりして下さいよ。張り合いがありませんね!まぁ、どちらにしても相手にはしてませんがね!アハハハッ!!」


まゆみと陽子はそんな直樹を誘ったが


「・・・ごめん」


その一言に何も言えなかった。


そして、まゆみと陽子の二人だけのクリスマスが始まった。