自宅へ戻った直樹。


それまで当たり前のようだった家族の笑顔に会えない淋しさは、あまりにも残酷だった。

そんな中、思い出されるのは娘の直子だった。


その頃、直子は恵子の実家で祖父母と何不自由なく暮らしていた。


しかし、直子は環境の変化か、一向に慣れる様子もなく、ただ暴れるだけで健三は手をやいていた


健三は、どうしたら良いものかと、直子をよく知る松田に相談しようと病院を訪れた。


その相談はと言うと、直樹の教育のせいで直子がぐれたなどと批判するものだった。


更には所詮、直樹の血をひく人間、自分の手に負えないのは無理もないと言い放った。


「あなたは何も分かっておられない」


「今更工藤の何を知る必要があると言うんですか」