この日を境に
直樹は時折
辛そうな顔を見せては
仕事に身が入らなくなった。
また電車に乗る度
あの女性の事が浮かび
過去を思い出され
悲痛な気持ちにかられるようになった。
そんな日々を送っていたある日、直樹は体調を崩し病院へ足を運んだ。
診察が終わって薬の処方箋の受け取りを待っていた時だった。
横に座っていた幼い子が「病院イヤだ!」と駄々を捏ねていた。
直樹は持っていた紙に絵を描きその子に渡した。
その子の親は下手な絵に目をしかめた表情を見せたが、その子は「お兄ちゃん、ありがとう」と告げて元気よく診察室に入って行った。
