5年先のラブストーリー-この世のしるし-


この日を境に

直樹は時折

辛そうな顔を見せては

仕事に身が入らなくなった。



また電車に乗る度

あの女性の事が浮かび

過去を思い出され

悲痛な気持ちにかられるようになった。


そんな日々を送っていたある日、直樹は体調を崩し病院へ足を運んだ。


診察が終わって薬の処方箋の受け取りを待っていた時だった。

横に座っていた幼い子が「病院イヤだ!」と駄々を捏ねていた。


直樹は持っていた紙に絵を描きその子に渡した。


その子の親は下手な絵に目をしかめた表情を見せたが、その子は「お兄ちゃん、ありがとう」と告げて元気よく診察室に入って行った。