流れる景色に
気を取り直し
「次の駅に早く着け」と
言わんばかりに焦りを感じていると座席付近から騒ぎ声が聞こえた。
何事かと振り向くと
老婆が若い男性達に取り囲まれていた。
すると、さっきの女性が
助けに入り
老婆を優しく
宥めていた。
直樹はこの光景に
フラッシュバックが起こり、ある日の出来事と重なり合い強い痛みを憶えた。
一目惚れ?
電車を乗り過ごしている事も忘れる程、女性だけをただ呆然と見つめていた。
結局、会社に姿を現したのは昼を過ぎてからだった。
案の定
取引先との商談をすっぽかしてしまい、上司に叱られるも、全く上の空。
心配していた同僚の掛け声にも適当にあしらい、完全に腑抜け状態だった
