乗っている電車は、特急で次の駅まで30分はかかる。
しかも本日は
取引先との大事な商談があり、遅れる訳にはいかなかった。
気だけが焦る一方で
周囲の冷たい視線に
上着で顔を隠そうとした
が・・・
今度はその上着の裾が
扉に挟まれているではないか・・・
その時だった!
次から次へと慌てる姿に
近くにいた一人の女性が
思わず、「クスッ」っと
吹き出してしまった。
あまりの恥かしさに
赤面していると
その女性は何も言わず
上着を引っ張り出した。
直樹は、一言礼を言おうとした。が、
女性は、何事もなかったかのようにその場から離れた。
