‐見えなかった大切なもの‐
その後、直樹は玲子が次々と繰り出す悩みに対して、無駄に口を挟まず、聞く側に回った。
悩みの内容よりもむしろ「なぜ、そこまで悩んでしまうのか?」
その原因を探るかのように耳を傾けていた。
最後に「また相談したい事があったら連絡をくれれば良いよ」と携帯番号のメモを手渡した。
この時、良かれと思い、したこの行動が玲子を余計に追い詰めて行くとは知る由もなかった。
次の日、玲子は通っている介護学校で介護の講義を受けていた。
昨日、直樹と再会した病院では授業の一環で研修生として勤務していたのであった。
そんな玲子は正義感が人一倍強く、また何事に対しても完璧でなければ済まない性格だった。
高校卒業を機に今の介護学校で三年間学び、介護の道へ進んだものの・・・
何が原因なのか仕事に意欲が出せなくなった。
悩んだ挙げ句出した答えは、自己の勉強不足がそうさせるんだと言うものだった。
そして選んだ道はもう一度学校に通う事だった。
