玲子は何を思ってそう言う話をしているのか?
とにかく気が張っているのを感じたので、リラックスさせようと少しふざけた。
「へぇ~俺の絵でそこまで読み取るとは恐れ入ったな~少年が凄いのかな?はたまた安本さん?もしや俺が凄いのかな~?」
しかし、玲子は真剣そのもので、そんな返事には耳を貸そうとはしなかった。
直樹は「しまった」と言わんばかりに次の話題を必死に探した。
「何か、安本さんを悩ませてしまったかな?」
すると玲子は直樹を真っ直ぐ見つめ
「いいえ。悩みと言うより、いったい自分は今まで何の為に生きて来たんだろうって・・・」
一瞬、沈黙が走った。
その瞬間、直樹の緊張は完全に解け、出逢った時の正義感とはまた別の違和感を憶えて仕方なかった。
直樹は『何の為に生きているのか』この台詞が一番嫌いだった。
それをまさか玲子の口から聞かされるとは思いもよらなかった。
