「工藤さんが絵を描いてあげた子供さんだと思うんですけど・・・」
「ああ!あの子!・・あの子がどうかしたの?」
「患者さんの事はあまり言えないんですが・・」と話を続けた。
「あの子、健太君って言って、ある病気で手術をしなければならなかったんですが、凄く病院が嫌いで・・・でもさっき、手術を受けるって言ってくれて・・」
「えっ?そんなに体が悪いの?」
「いいえ、手術自体はそれほど難しくないみたいなんですが、なかなか受けるって言ってくれなかった子なのに、工藤さんの絵を私に見せてくれてその絵に力と勇気を貰ったって語ってくれたんです」
玲子が何を言いたいのか直樹には分からなかった
「私、最初にあの絵を見て、正直何も感じなかったんです。でも健太君が語っている時にふと考えさせられたんです。“進める道は一つじゃないけど進むべき道は一つしかない。それを乗り越えなければ、いつまでも真実の道はみつけられない”・・・って」
