「って嘘に決まってるやろ。
アイツがんな些細なミスするわけないやん。
その辺ぬかりなさそうやし。
まあお前も色々身に覚えあるみたいやし、見えないとこはどうだかしらんけど」

「も、もういいから。
話題変えてよ」

「いや、最後に一つ。
リョウの事やから多分こっちも大丈夫やと思うけど、くれぐれも妊娠とか気をつけろや。

そんなんなったらアイツ、お前の兄貴に呪い殺されるか、お前の元彼氏に殴り殺されるかするやろうし。
あんなバカでもうちの大事なベーシストやしな」

「ちょっと、ケンゴ!!!
もう黙って!お願いだから」


はは、やっぱりオモロイ。
相変わらず弱いなアキ、こっち形の話題に。


ぶっちゃけさっきの部室云々は今俺が考えた冗談やけど、あながち嘘とは思えんな。
このアキのうろたえっぷり見たら。

学校でとか、ほんまあいつしょうもないなと思ったら、釣られて浮かんだあるアイデア。


ミヤにしかけた俺の下らん嘘の延長戦。
さらにどうしようもない考えが――。


未ださっきの余韻で赤い頬をして、誤魔化すようにアイスティーを喉に流し込むアキに言う。


「なあ俺さ、明日も部活行かんから、あいつにもそう伝えといて」

「そうなの?
新入部員入ったばっかなのに、ケンゴにドラム教えて欲しいって後輩いっぱいいるよ?」

「今ちょっと色々忙しくてな。
全部片付いたらちゃんと部活行くから」

「ふーん」


素直に返事はしたものの、まだ全部は納得してないような顔のアキ。

その後追加で何か聞かれるかと予想してたら、ナイスタイミングか。
ドアの外でバタバタと騒がしい音が聞こえてきた。


「あ、やっと帰ってきたみたいやでリョウ。
じゃあ俺もう帰るな」

「え?嘘。
帰っちゃうの??」


そのセリフと顔。

リョウが見たらイチイチややこしい事になりそうやんか。

なんて面倒な先の展開を予想をした俺は、その後続くだろうアキの言葉を遮る為に、急いで鞄を抱えて立ち上がった。

晴れたんだか余計に曇ったんだか、説明がつかない曖昧な感情を胸に抱えながら。