「お前の事はもちろん好きやし可愛えぇと思っとる。
やけど俺とお前とは、想いの強さがちょっと違うんや。
昨日お前が言うた“俺追う為に音楽やめて……”とか、ぶっちゃけめちゃめちゃ恐なってもうて。
そんなお前を受けとめる覚悟、俺には全然足りひんねん。
やから……」

「じゃ、じゃあ音楽は止めない!
予備校とバンド、頑張って両立させるから」

「ちゃうねんミヤ。
そういう問題じゃないんや。
お前が自分の為に東京行くんなら俺は全然かまへん。
やけどお前は俺が行くから東京行くんやろ?
男の為に自分の将来を決めるような奴、正直俺は嫌やねん」

「………」


ショックを受けたように、身体の細胞を全て固まらすミヤ。


ああ、ヤバイな。
話の後半、昨日考えてたより若干言い回しがきつなった。

真っ直ぐ俺を見つめる痛々しいミヤの眼差しに、つい冷静さが奪われてもうて。


やって出来ればコイツを傷付けたない。

別れ話しといて勝手な話やけど、出来るだけ最小の傷でミヤが別れを納得してくれる言葉を選びたかったんや。

今までの自分のふざけた感情を詫びるつもりも兼ねて、穏便に、綺麗に――。


――やけど“綺麗な別れ”?

そんなもんどこにあるん。
あんなら今すぐここ出せや。


男と女の恋愛においてそれを成立させるのは、実はレベルE難度。

その辺の偏差値が実は低い今の俺には確実不可能やった。
俺とした事が、全く考えが甘すぎたわ。


むしろあらゆる選択が間違いだったと気付くのは、
まだ、まだ、先のこと――。