「ケンゴ先輩どうしたの?
こんなとこにわざわざ呼び出して?」

「あぁ、ちょっとお前に大事な話あんねん」

「大事な話?
何、それ」


――思いたったら即行動。
部活を揃って抜け出して、早速ミヤを裏庭に呼び出した。

辺りに人影は皆無。
別れ話をするのには絶好のシチュエーション。


裏庭の一角にある小綺麗なベンチ。
そこに小さく座って、おっきな目で俺を見上げてくるミヤ。

猫っぽくてやっぱり可愛えな、なんて思ったりしたけど、俺はそんな彼女の正面に立って躊躇なく告げた。


「あんなミヤ。
別れよか、俺ら」

「え……」


大きな目を更に見開いて固まるミヤ。
そのまま微動だにせん状況で、まだ今の言葉を理解するまでには至ってへんっぽかった。


そりゃそうやろ。
昨日あんな事をして今日はコレ。

一体俺はどこの二重人格者やねん。

でも仕方ない。
もう決めたんや。

だからもう一度、今度は更に口調を強めてみる。


「ごめんなミヤ、もう別れよう。
俺これ以上お前とはよう付き合えん」

「な……なんで?」


声を震わせて、静かに言葉を漏らす。

いつも強い光を持った瞳が弱々しくなって、心臓がどうしようもない程痛くなった。


“何で”か。
理由を聞かれるのはもちろん想定内。

俺は昨日の晩から用意してた答えを、一年も付き合った愛しい彼女に向かって残酷にも言葉にした。