「あれ?その顔。
もしかしてマジで知らなかった?
あんたとミヤちゃん、皆も羨むお似合いカップルって噂だったのに。
特にお姫様願望強い夢見る女の子達に」

「…………」

「基本女に愛想無いあんたが彼女だけには違ったじゃない?
まるでおとぎ話のナイトみたいに彼女の事凄く大事にしてて、可愛くって仕方ないみたいに自分の腕の中閉じ込めて。
彼女もそんなあんたに守られて安心仕切ってたしね」

「……そんなん、全然違うわ」


脳が危険信号を訴えて。
とっさに全てを否定する。

聞いたらいけない事を告げられる予感で本当は鼓膜を塞ぎたいのに、それは容赦なく俺に降り注いでくる。


「ううん。違くないよ。
いい?よく考えて。
彼女はその辺のバカな女じゃないでしょ?
人の本質をちゃんと見れる賢い子だもん。

もしあんたが自分で思ってたみたいに適当に付き合ってたなら、さすがに彼女も気付いたはずでしょう。
あんたの想いが、しっかり彼女の心に響いてたんだよ。

じゃなきゃあんたに“別れたい”って言われてあんなにしつこく食いさがらないでしょ。
そうまでしても離したくない相手だったからだよ、あんたが」

「……もう、黙れやお前」


低く怒って、階段を掛け降りる。

その足裏の感覚が何故か自分の物じゃないみたいで。

グルグルと。
頭の中が真っ黒な世界で回る。