とどめにあともう一声。


「……それだけやないやろ、ミヤ。
俺に話してない事、他にもあったやろ。
お前にしたら凄い大事な事」

「――あ。
先、輩……」

「こんないくつも隠し事して、人の事信用すらせんで何が“好き”や。
何やねん“付き合う”って。
この一年お前ずっと俺を騙し続けてたやろ。
――もうええわ。
お前みたいな訳わからん女マジでいらんわ」


言葉にしながら自分で気付く。


別に付き合ってるからって自分の全てを明かす必要はないと思う。

けど唯一。
その事だけは……親父が死んだってのは、ミヤの口からきちんと話して欲しかったと。

俺の中で引っ掛かって、深い傷になってたのだと――。


ただ茫然と。
俺を捕え続ける二つの瞳。

さっきから溢れ続けた水滴が溜まって。
ゆっくりと頬を落下しそうになる
その直前――


「――好きだ。
ミヤ、お前が好きだ」


って床上から聞こえてきた強い声。

更に続けて。


「スゲー好きだ。
世界一好きだ。
生まれた時から好きだ。
それに一生好きだ!!」


馬鹿みたいにただ繰り返す。


身体中ボロボロで、痣の出来た頬。
それに血の滲む唇をしっかりと開けて。

痛みなんてまるで感じさせない、しっかりと覚悟を決めた声色で。
目の前の女に真っすぐに告げる。


その眼差しと同じ。
その心と同じ。

真っ白で汚れのない、
純粋な愛の言葉を――。


「――俺ずっと後悔してた。
あの夜に戻りたいってずっと考えてて、お前に謝りたいのに謝れなくて、もうそんな資格すらないのかと思ってた。

俺のせいで泣いて欲しくなくて、これ以上傷付けるのが怖くて、一定の距離以上踏み込むのが出来なくなってた。

でもそんなのもうやめる。
もう俺は諦めない。
お前が誰を好きでも誰を忘れられなくても、俺はお前が好きで、お前以外は考えらんないから絶対お前を手に入れる。
何年かかっても、何十年かかってもミヤを絶対振り向かせる!
俺を好きだって言わせてみせる!!」