“据え膳食わぬは……”とかあんな格言くそ食らえや。

こんなクソ女にぶっこむくらいなら男やめるわ。


俺めっちゃグルメやねん。
不味いもん身体に入れるぐらいなら、餓死する方選ぶって常々宣言してるし。


とりあえず綺麗な空気を肺に入れたくて


「俺便所」


と向かいのカズマに一声かけて立ち上がると、やっとそこで斜め前の空間がぽっかり開いてるのに気が付いた。


「あ?リョウは?」


ついでに相手の女もおらん。
……ってまさか。


嫌な予感に頬を引きつらせながらカズマを見下ろすと、能天気な顔でストローの袋を吹き飛ばしながらつまらなそうに言う。


「ん〜リョウならさっき飲み物取り行くって行ったっきり。
ついでに隣の女と一緒に。
全くどんな飲み物飲ましてんだろね〜今頃」

「アイツ……」


マジで節操なさすぎやろ。
せめて予定時間ぐらい我慢しろや。

どうすんねん、このメンツであと一時間。

まさに消化試合。
社交辞令でアドレス聞く事さえきっとないで。


暴れだしたい気持ちを沈めようと、ゆっくりため息を一つ。

するとまた始まった、クソ曲のイントロ。


――誰やねん。
俺の神経逆なでする奴は!?


「あーこれあたしのテーマ曲!
ケンゴ君聴いて聴いて〜」


って例の隣にいた女が、俺のセーターを引っ掴んで自分の方に引き寄せるから……


――あぁ、やっぱりお前か。


その瞬間、ブチッ!っと頭の中で何かがキレた音がした。

もう止まらへん。


「っざけんな!
こんな罰ゲームこれ以上やってられるか!
もう解散や!解散!!」


叫びながら女の手を振りほどき、演奏中止の操作をする俺。

これ以上下らない音を耳に入れないための自己防衛や。


もはや冷め切った密室空間。

フェードアウトしていくクソ曲のイントロは、やっぱりクソ以外何物でもなかった。