西の狼



「……竜堕とし……?」




ロジャーは二人が交わす会話の内容が分からなかった。




「……取りあえず座ったらどうだ?」





「あ、はい…」



三人は勧められるままにソファ―に腰掛けた。ヴォルカスも、自分の椅子に腰を下ろした。




「……それで、竜堕としっていうのは……何なんスか?」




「……今から、およそ400年程昔になるか………時の魔王様は、魔王様配下の十騎士達を筆頭にした軍団を率いて、辺境の部族を併合していた。従わない部族は、問答無用で殲滅された………」




「それって………『統一戦役』…のことッスか?」




「……あぁ。一般にはそう言われているな。魔王様は辺境の部族を次々と併合、或いは殲滅し……僅か二年で魔界全土を掌握したのだ。そして、十騎士達は一部を除いて全員が各地の領の領主となって、今の統治制度の安定に勤めることになったのだ。」




「たった……二年で魔界を………」




「……その課程で殲滅された部族は、十や二十では無かった……彼等ドライツェンの一族も、そんな部族の一つだった。だが、その戦闘力は魔界全土の部族の中でも一、二を争うだけの力を持っていた………我輩が相手取った中でも、まさに最強の部族だった。」




「……そうなんスか…」



ロジャーはこの話を聞いている時もチラチラとアグニの様子を見ていたが、どうやら静かに聞いている様だ。





「……まぁ、ドライツェンの一族は世界と共に歩む孤高の一族だからな。そんな部族を併合しようなどという考え自体が、今考えれば無理な話だったのだ………」




「……………あの戦いで、多くの仲間が命を落とした……竜王も、数人が死んだ……」