西の狼



「………ダリウス……」




ヴォルカスは、夕日に照らされた街を見詰めて、一人窓際に立っていた。




そこに、誰かがドアをノックした。





「……誰だ…?」



「あ、ヴォルカス様……ロジャーッス。」




「……ロジャーか……入りなさい。鍵は開いている。」






「……失礼するッス……」





ロジャーは静かにドアを開けて中に入った。足を踏み入れた瞬間に、窓際に立つヴォルカスが目に移った。




「……どうかしたのか?」




「あ、その………」





「………?どうしたんだ……?」




ヴォルカスは煮え切らないロジャーの顔を見ようと振り返った。





視界に捉えたのは、ロジャーと、その肩に乗ったヘイムダール………そして、見慣れない長身の男だった。




「……その男………」





「あ、この人は………ッ!?」




ロジャーはアグニのことを何とか取り繕おうとしたが、先にヴォルカスが口を開いた。





「………ドライツェンの一族の者か……」




「……その名を知っているのか……」




アグニは小さく呟いた。

その声は、何かを懐かしんでいる様にも聞こえた。




「え、ドライツェン………?」




「今は、呪いの民と呼んだ方が良いか?」



「!?ご、ご存じなんスか?」




「……少し、な……そうか、まだ生き残りがいたのか……」



「……お前は、何故ドライツェンの一族の名を知っている?」




「………かつてのドライツェンの一族の掃討作戦………『竜堕とし』……その名は、覚えているか?」




「………あぁ………」




「……私は、あの作戦の指揮を執っていた……」