西の狼



「………まぁ、そう言われればそうッスね……じゃあ、剣の姿じゃ無くても良いんじゃないッスか?」





「……じゃあ、見せてやるかな………」




「………え………?」





アグニは、唐突に全身から光を放った。




「うわっ……!?」






ロジャーはその眩しさに目を瞑った。


ゆっくりと目を開けると、部屋の中にアグニの剣は無かった。



だが、そこには見慣れない人物がいた………





「…………………あれ……………?」






その人物は、かなりの長身に、黒い衣服と赤マントという出で立ちだった。

髪は烈火の様に赤く、瞳は眩しい黄金色をしている。


だが、一番印象的なのは、その背中に生えた紅い翼だろう。


その翼は鳥の様な羽毛では無く、どちらかと言えばコウモリに近い。




「………うわぁ………」


ロジャーは、アグニが全身から放つオーラに見とれていた。




「……これが、俺の本当の姿だ。マクリールも同じ様な姿だが………まぁ本人の意思でなければ姿は変えられないからな。」






「そうなんスか……」




「……まぁ、見たかったら本人に頼むことだな。」




「………そうっスねぇ………」



若干諦めた感じになっていたロジャーだが、それを聞いて明らかに何か企んでいる様だ。



マクリールも、それを感じたのかロジャーから少し距離を開けた。




「………まぁ、俺もレオンが回復するまでここを動けんしな。どうせなら、城主に挨拶でもするかなぁ……」




「そうっスねぇ……じゃあ、行きましょうか。今は多分、執務室にいらっしゃると思いますから……」



「……そうだな。今の内に済ませるか。」


三人は揃って執務室に向かった。