「……まぁ、な……」
「何をはぐらかす必要がある……こいつは、火を操る一族の長、火天竜王だ。全竜王の中でも、極めて優秀な一人だった。」
「……へぇ………」
「……このままでは割に合わんな………」
アグニが低く呟いたのをヘイムダールは聞いてしまった。
「……?おい、まさか………」
「確かに俺は火天竜王だった。だがな、そこのヘイムダールも竜王だったんだぞ?」
「な!?バカ、テメェ………!?」
「そうなんスか!?」
アグニの言葉を遮ろうとしたヘイムダールは、輝かんばかりのロジャーの瞳に見つめられて言葉に詰まってしまった。
「………う………」
それが面白いのか、アグニはつらつらと言葉を重ねていく。
「俺は火だが、そいつ…………マクリールは、水を操る一族の長、水天竜王だ。更に言えば、全竜王の中で最も魔力の制御に長けていた。」
「………チ……ッ!」
「へぇ………ヘイムダール……じゃなかった、マクリールはそんなに凄かったんスねぇ………」
「俺達は、封印されている間は本当の名を知られてはならないしきたりなんだ。」
「え、そうなんスか?」
「あぁ……だが、知られてどうこうという訳でも無い。ただ、封印句の意味が無くなる………つまり、封印されている意味がなくなるんだ。」
「意味が無くなる………じゃあ、魔力の制御は……」
「それは別に大した問題じゃ無い。」
「どの道、俺達竜王にはそんな行為無意味だからな。」
「え、そうなんスか?」
「あぁ…一族の中でも、竜王は心技体全てに優れた者が代々継承して来たものだ。それを、今更封印して修行する必要も無いだろう?」

