西の狼




「………ッ、馬鹿な…………ッ!?」







『……さらばだ、哀れな子羊よ………』









レオンは光の剣を振り降ろした。






「ぐおぉぉぉッ!!」







ダリウスは刀にありったけの魔力を注いで光の剣にぶつけた。


だが、ダリウスの抵抗も虚しく、巨大な光の剣は、ダリウスの全身を飲み込んだ。



光の剣が消えた後には、傷だらけのダリウスと、地面にまっすぐに走る亀裂が残った。


ダリウスは、咄嗟に放った魔力で出来た僅かな隙間に滑り込んだ為に生き延びたのだ。









『……生き延びた、か……』




「ぐ………約束の皇子の力が、これ程とはな……今度は、準備を整えてから出直すとしよう………」





ダリウスは刀を納めて姿を消した。








『………気配が消えたか………』






「………おい……」




一人静かに佇むレオンに声をかけたのは、アザトホースだった。





「……お前、何モンだ……?」




『……我は、聖櫃とその器を守りし使命を帯びた者……白騎士の位にいる者だ…黒騎士よ………』





「……!?」




アザトホースは自らを白騎士と名乗った者の言葉に息を呑んだ。




『……今は、一時的に体を借りたに過ぎない。いずれ意識は戻る。我のことも記憶してはいない………』


「………お前は……『三騎士』の………」





『……白、黒……残るは蒼騎士……蒼騎士は、器の近くに……』



「何!?」




白騎士はそう言ったかと思った時には、既にレオンの体から消えていた。



「………黒騎士……か……もう、封印されてる訳にもいかなくなっちまったなぁ……」