西の狼




静かに開いた口から、氷の様な冷たい声が漏れ出した。




『………聖櫃の鍵は開かれた………何人たりとも聖櫃を傷付けること敵わぬ……傷付ける者あらば………』







レオンは右手を振るった。


それに連動する様に、背中に四枚の純白の翼が生えた。




『……我が、光の裁きを授けよう……』






















魔王は、玉座に座っていた。

不意に、東の方角から強力な魔力を感じた。




「………目覚めたか……」




そこに、アルナスがやって来た。




「魔王様………この魔力は……」




アルナスも、この魔力を感じた様だ。

心なしか、その表情は怯えている。




「………約束の皇子が目覚めたのだ……」





「レオンが……!?」



「……世界との約束が果たされる刻が、近付いている様だ……」



「………約束の皇子とは、一体何なのですか?」





「………またの名を、聖櫃と呼ぶ……」


「聖櫃………?」



「その身に、神の力を宿した人間のことだ……」


「………神、ですか………神とは、どういう………」











「……………この世界を創造し、我々を創造した存在だ……」













「………魔王様を、創造した……!?」




魔王の言葉は、この世の真理を根底から覆す言葉だった。





「この世界は、大精霊たる魔王様達によって創造されたのでは無いのですか!?」




「我々とて、無から生まれた訳では無い。原初の虚無から誕生し、我々を創造した存在がいるのだ………」




「それが………神……」

「神は我々に請け負う属性を与えた。」