西の狼



「なんだ…あの冥い魔力は…!?」





「……そう言えば、君とはまともに会話していなかったな……」




「お前と話すことなんてねえな!」




レオンは魔力を集めて、それを炎に組み替えて放った。


レオンの身長程の大きさの火球がクロガネの肩から放たれた。


火球はまっすぐにダリウス目掛けて飛び、直撃して爆発した。







だが、爆発で巻き上げられた煙が晴れると、そこには無傷のダリウスが立っていた。













だが、それだけではない…………













「…………何だ…あれは………」






レオンはただ呆然とするしか無かった。







何故なら、ダリウスの目の前に、黒い人影が立っていたからだ。



その姿は、まさに黒い幽霊としか言えない。







「…………あれは、死霊か……?」




「死霊……?何だ、それは?」




クロガネの呟きにレオンはすぐに聞き返した。



「死んだ魔獣や魔族の中には、魂の断片となって現世を彷徨うものがたまに現われることがある。その魂を魔力で捕縛し、死の呪いをかけるんだ。」




「死んだ魂に、更に死の呪いをかけるのか?」



「あぁ。死んだ魂がその負荷に耐え兼ねて、その形質を大きく変貌させてしまう。それが死霊…呪いのままに動く殺戮人形だ……」



「殺戮……人形………」



「………そういえば、聞いたことがあるな……魔族の中に、死霊を操る騎士がいる、と………こいつがそうだったのか……」




「………そう……私の名はダリウス・フェルトリウス……死霊伯爵の異名を取る騎士だ……」




ダリウスはそう言いながら更に自分の回りに死霊を出現させた。