「く……よもや、貴様が現われるとはな…ヴォルカス……」
「ダリウス……我輩の領内で勝手な振る舞いは許さぬぞ。早々に立ち去れ……さもなくば、我が愛槍ゲイボルグに貫かれることになるぞ。」
「……この場で貴様とやり合うのは、得策では無いか……この場は退こう……レオン、貴様の魔剣…必ず私が奪ってやる。それまでは、せいぜい死なぬことだ……」
ダリウスは刀を鞘に納めて姿を消した。
「……立ち去ったか……怪我はしてないかね、少年?」
「あ、あぁ……あんたが、ここの領主なのか?」
「いかにも。我輩の名はヴォルカス。このロイガーの森を含んだ一帯の領主を魔王様より任せられている。」
「それで、何で俺を…」
「………君は、約束の皇子か……?」
ヴォルカスがゆっくりと放ったその言葉は確かな重みを持ってレオンの体を芯から揺さぶった。
「……そうか…子供だとは聞いていたが、これ程若いとは……ここでは話し辛い。我輩の居城に案内しよう。後ろに乗りたまえ。」
「…………えっ…………!?」
レオンのささやかな抵抗も虚しく、ヴォルカスの馬の後ろに乗せられたレオンは、なす術無く城へと連れて行かれた…………
「………好きなところに座りたまえ。」
城へと到着したレオンは、ヴォルカスに私室に案内された。
「………この街は、東の最果ての街だが、優秀な穀物と材木の産地でもある……それも、ロイガーの森と、森の東を流れるティアマト河の恵みあってのことだ。我輩は…このデメテルの街の領主であることに誇りを持っている……」
ヴォルカスは窓際に立ってそこから街を眺めていた。
レオンは、その背中を静かに見ていた。やがて、ヴォルカスは静かに振り返った。

