西の狼



「……何……?」




この男…これが魔剣だと見抜いた…?



「……その魔剣を置いて行くなら、見逃してやらんこともないぞ、人間……」




「………断る………」






「………残念だ……我が名はダリウス…貴様の名も聞いてやろう……名乗るがいい。」





「…レオン・ジル・ブラーニングだ……」





「レオンか…良い名だが、惜しいな……」



レオンがそう聞き取った瞬間には、ダリウスの姿は消えていた。




「!?な、どこに……!?」



辺りを見回すが、木々が邪魔で遠くが見えない。






「レオン!上だ!!」




「何!?」



レオンが上を見上げると、太陽を背に何かがレオンに向けて落ちて来ていた。




「あんなところに……!?なんて奴だ…!!」



「気付いたか…だが、この距離ならば外さん!」



ダリウスが刀をレオンに向けて突き出した。

その刃は確実にレオンを射ぬきそうな勢いだったが、その時どこからか巨大な火球が飛んで来た。




「!?」




その火球はダリウスを飲み込んで吹き飛ばした。



「くあ………ッ!?」



その火球の爆風は回りの木々を薙ぎ倒した。

「く……誰だ!?」



レオンは火球が飛んで来た方に剣を構えた。
そこには、木々の間を縫って馬に跨がった大柄な男が現われた。
その手には大振りのランスを握っている。




「……大事ないか、少年?」



その男は馬をレオンの側に進ませた。



「……あんたは……」




「我輩は、この近辺の領主の任を魔王様より賜りし者だ。」



「領主……」



レオンが更に口を開こうとした時、吹き飛ばされたダリウスが倒れた木々を吹き飛ばして現われた。