「しかし、人間は不便だな……食料を得なければ生きられないんだからなぁ。」
「仕方ないだろう。そういう風に出来てんだからな………さて、じゃあ行くか……」
レオンはアザトホースが言った南の街に向かって歩き出した。
「…………ヴォルカス様、文が届いておりますが……」
一人の衛兵が、目の前の男に文を差し出した。
衛兵の声に振り返った男は、大柄で恰幅の良い大男だった。髪は金の短髪、瞳も同じ金色をしている。
「我輩にか……誰からだ?ライル殿か、さてはバリウル殿か?決闘ならばまた後日改めてと…………」
「…………魔王様からでございます……」
一人、文の送り主を予想していたヴォルカスは、衛兵の予想外の言葉に息を呑んだ。
「………魔王様が、我輩に………?」
ヴォルカスは衛兵から文を受け取った。
その紐を解いて中を読んだヴォルカスの表情は徐々に厳しくなっていった。
「………ヴォルカス様………?」
普段から温厚で有名なこの方が、これ程険しい表情をなさるとは………一体中には何が書いてあったんだ………
主の表情に思案していると、ヴォルカスは丁寧に文を丸めてまた紐で閉じた。
「……しばし、出てくる。後の事は頼んだぞ。」
「……はっ……」
衛兵は部屋から出て行く主を無言で見送った。
「…………魔王様は、一体何をお考えなのだ…………」
ヴォルカスは途中の武器庫から自分の使うランスを取り、馬に跨がって城から出た。
「……………『この世に光をもたらす約束の皇子が、貴様の領内に飛んだ。その者を保護し、力を付けさせよ。そのためならば、どんな手段を用いても構わない。』…………我輩には、貴方の真意が分かりかねます……」

